部屋に帰ると、正面の東向きの窓の向こうの朝の薄い青空の中に、ぼっかりと、オレンジ色の太陽が浮かんでいた。
　昨日は一日中バイトをして夜10時半ころ家に帰った。とても珍しく、妹がカレーを作ったというのでそれを食べると以外にうまくて2杯食べた。夏カレーで元気が出たのか、その後無性に踊りたくなって玄関に置いてあったＣＤラジカセを自転車のかごに突っ込んで産業文化会館のエントランスに行き、よしっ踊るぜっミュージックスターツっカチ！しかし電池が切れていて、こうなるとうただ邪魔にしかならない不必要にでかい一昔前のラジカセは、うんともすんともいってくれなかった。そんなことしてたら電話がかかってきた。久しぶりだったからなんだか楽しかった。元気そうで。電話しながら納豆111日目を行った。その後音なしで踊ってみたら思っていたよりも体が動いてうれしかった。7月に出る予定のイベントではソロダンスをかまそうかと思った。それから家に帰りシャワーをあびたが、夏カレーのせいか眠くならず、３階の居間に行ってぼけーっとテレビを見ていた。６チャンでやっていた映画が面白かったけど結局最後までは見なかった。見ている途中で猫がなにやら家の中をうろつき始めたのだ。こいつはいつも３時か４時ころになるとお父とお母の寝室のドアをガリガリとひっかいてどちらかを起こし２階のドアを開けさせて外に出て行く。僕もいつもどおり２階に行ってドアを開けてやった。ところがどういうわけか猫は出て行かない。ドアが開いた隙間から外を見ている。そしてやけにべたべたと人の足に体を摺り寄せてくる。猫は普段かなり愛想がわるいから気持ち悪いと思ったが相変わらず毛並みは良くて気持ちいいし自分も別にのんびりしていたかったからそこに座って猫をなでながらぼけっとしていた。気付くと空が明るくなってきていた。座ってから１０分くらいたって猫は僕の足にも飽きたらしくだるそうに開いていたドアの隙間からまだ肌寒いそとに出て行った。僕は寝ようかと思ったが、本当は７時からやる予定の納豆を時間を早めて今すぐやりたくなった。冷蔵庫から納豆を取り出し、なんとなく服を取り替え、自転車で商店街に向かう。朝４時半の商店街はシーンとしていて素敵だった。横断歩道を行ったりきたりしながら納豆をやっていると、パトカーがやってきて、納豆を始めて以来２度目の職務質問を受けた。おにいさーん、ね、ちょっといいー、ね、なにやってるのー、え、ん、え、パフォーマンス、て、なに、作家、なに、ああー、へぇ、行田に、うーん、ちょっと免許証見せてもらえるかな、うん、あれおにーさん住んでるのすぐ近くじゃない、ねぇ、あれー、そうなんだ、納豆を、ふーん、そう、じゃーがんばってね、うん、じゃ、ありがとうね、がんばって！二人組みの警察官たちはパトカーで明け方の街に消えていったのでした。お勤めご苦労様です。またどこかで会うでしょう。
　部屋に帰ると、正面の東向きの窓の向こうの朝の薄い青空の中に、ぼっかりと、オレンジ色の太陽が浮かんでいた。
眠る。

　起きる。
　今日はこれから館林の美術館に行って来る。
　遊ぶ。
　生きることを、遊ぶ。
　僕は遊ぶことに必死だ。バイト先の上司が先日僕に「毎日単調でいやになるでしょ。」と聞いてきた。「いいえ、楽しいっすよ。」と僕は答えた。答えてやった。あんたが望んでる答えなんてしてやらないぜ。知っているものそんなことは。今まで何度だって考えてきたんだから。そうならないようになんとか工夫して日々生きていくんだよ。そうしなきゃすぐに気が変になるような世の中なんだから。僕はそなんな世の中を甘んじて受けて自己犠牲の満足感で自分をごまかして生きていくよりも、なんとか遊んでやるって思っていろいろ考えながら生きていくほうを選ぶ、今はこっちを選べるから。それにそういうのが好きみたいだから。よーっしゃっ、行ってみますか♪